Dr.法子の相談室
言いにくい悩みも話せる、
誰もが行きやすいホームドクター
患者さまの話をよく聴き、治療方法など一緒に考えます。
中絶を減らすための努力とその継続。
閉経から更に幸せに第2の人生です。
産婦人科、敷居の低いクリニックです。
何でも相談してください。
2016年時インタビュー
こちらの病院は、お父さまの代から50年続いているそうですが、先生に代わられたのはいつですか。
金子先生:平成10年に勤務医をやめてからです。平成10年から13年までは父と2人で診察していました。
ご自身も3人のお子さんの母親であり、その上お産も診ていらっしゃるのはハードワークではありませんか。
金子先生:プライベートの時間はほとんどありません。
過労のために一度はお産の扱いをやめようとも思いました。でも、そのときに患者さんから「先生がやめたら行くところがなくなります」とたくさんの方に言われ、思いとどまりました。
もともとお産が好きだから産婦人科の医師になったのですから、それ以来患者さんのために生きようと決心しました。第2次ベビーブームの頃は、月に90件お産があったこともあります。開業してからトータルで1万数千人が当院で産まれています。
では親子2代で来る方もいらっしゃいますか。
金子先生:そういう方もたくさんいらっしゃいます。里帰りの妊婦さんはほとんどがそうです。自分が産まれたところだから、当院でお産したいという人は多いですね。
そういう方たちのためにもやめるわけにはいきませんね。でも、そこまで身を粉にして続けるのは、地域の人たちにとって絶対的に必要という使命感からですか。
金子先生:社会と接点があって、何かしら社会に必要とされているという満足感が仕事の原点だと思います。だから患者さんにやめないでと言われたときに、私でも必要とされているのだなと思うと続ける意欲がわいてきます。
また、私には自分にしかできない仕事があると思っています。誰もが来やすいホームドクターでありたいと思っています。実はちょっとした悩みをほとんどの女性が持っています。他人にはちょっと聞けない、だけど悩みを抱えている、そういう方が年齢に関係なく多いわけです。
若い方で、彼氏に臭うと言われたという訴えなども多いです。あとは外陰の性器の形がおかしいと言われたという方もいます。彼のほうは、何人かしか知らない中で比べて言うのでしょうし、たいていの場合は特におかしいということはありませんが、好きな人に言われると若い方は深刻に悩みますよね。でも、たまにそういう方の中にも、本当にトリコモナスとかカンジダ症とかクラミジアにかかっている方もいます。あとは細菌性腟炎の方が多いですかね。
細菌性腟炎というのはどういう状態を言うのですか。
金子先生:性病ではなくて、自浄作用が落ちて起こるものです。一言でいうと体調が悪いという状態です。腟の中には、自らきれいにする機能があるのですが、それが落ちてくると一般の雑菌が原因となって臭ったりすることもあります。
女性にとっては相談しにくいことですね。
金子先生:でも、彼氏に臭うといわれたからといって、なかなか大学病院を受診できませんから、当院のようなところも必要だと思います。
そうですね、必要だと思います。またこの施設では、初診からOC(低用量ピル)を求める患者さんも多いと聞きましたが。
金子先生:多いです。問診票に「OC希望」という欄を設けていますが、現在月に500人以上の方にOCを処方しています。OCの説明をするときは、私自身長く飲んでいますし、経験もふまえて熱意を込めてお話します。
そういう先生の熱意が患者さんに伝わっているということでしょうか。
金子先生:そう願っていますが、実際口コミで来る方がほとんどです。すごく月経痛がひどかったり、PMS(月経前症候群)で悩んでいたりする方が、OCを処方した私の患者さんから聞くなどして来るケースが多いです。あとは、OCのホームページを見てきたという方も。最初からOC目的で来院される方が増えています。
以前は、他の症状で来ていた患者さんにOCをすすめていました。それが今や初めからOCを求めてくる方が増えています。また、アンケートを取ってみたところ実際OCに高い満足度が得られたので、そういったアンケート結果も用いて話しもします。
当院では、よく勉強しているスタッフが、まず私の診察前に問診票をベースに別の部屋で予診をします。避妊目的か、月経不順なのか、月経痛なのか、不正出血なのか、あらかじめ患者さんの来院理由を聞いておくので、私もスムーズに話しに入ることができます。
>>効率的な診療で、その分患者さんにより内容のある話ができますね。
親身になる、よく話を聴き決して威張らない!
金子先生:あと、私は机の上にパソコンを置いていません。古い人間かもしれませんが、画面を見ながら話すと患者さんの顔を見る時間が少なくなってしまうからです。私を見てくれていないという印象を与えると話を聞いてくれない冷たい先生だと受け取られてしまいます。だからパソコン仕事は診察が終わってからと決めています。顔を見ながら、たとえば月経不順だという方には、だいたい吹き出物もできていたりしますから、私も以前はひどかったという実体験も交えてお話します。
先生の人柄ももちろんですが、やはりスタッフの方々の対応も大切ですね。
金子先生:スタッフの対応はいいですよ。いつも患者さんの立場で話をよく聞くという私の診療方針がスタッフにも伝わっていると思います。女医だからいいというわけではないのです。女医の場合、患者さんは同性だから分かってくれるだろうという期待を持ってきます。それが裏切られたときのショックはとても大きくなると思います。
そうですね。やはり同性なのに理解してもらえないと失望してしまいますね。金子先生には患者さんの立場に立って患者さんの目線でお話してもらえるような印象があります。
金子先生:ここに来たらわかってくれる、共感してくれるところだと多くの患者さんに思っていただけるよう心がけています。当院へは、毎日100人以上の患者さんが来ますが、一人ひとり手を抜かずに一生懸命にお話します。2時間待っても良かったと思ってお帰りいただけるようにしたいのです。私にとっては毎日のことでも患者さんにとってはすごく悩んでいるわけですから、どんなささいな疾患でも丁寧に話します。
先生にとっては100分の1でも、患者さんにとっては100%。その落差が出てしまうと患者さんはガッカリしてしまいます。その辺を先生はよく理解していらっしゃるのですね。
金子先生:それは絶対に忘れてはいけないと思っています。医師としてやっていることは他の先生と何も変わりませんから、一人一人を丁寧に診させていただくということを常に意識して話をするようにしています。
>>産婦人科は、非常にプライベートな部分に関わっていますから、どれだけわかってもらえるか、話を聞いてもらえるかはとても重要だと思います。
中絶を減らすための努力、その成果
金子先生:最近では中高校生で性経験のある方には必ずOCの事を教えて、考えてもらいます。お母さんと一緒にOCについて聞いてもらうこともあります。
そういう方はどんなきっかけでこちらに来るのですか。
金子先生:最初の接点は、おりものが臭う、というのが多いです。他には最初から性病を心配してチェックしに来る方も多いです。私のモットーは敷居の低い産婦人科ですから、大きい病院へ行けない方が気軽に来られる受け皿、ちょっとしたかかりつけの医師という立場でいたいと思います。
OCについても気軽に相談できるわけですね。
金子先生:私は未婚で性経験のある方には皆に、高校生にもOCをすすめます。処方するチャンスはたくさんあります。避妊についていえば今、厚生労働省の反復人工妊娠中絶を予防する補助事業がありますが、そのメンバーとして私も参加しています。そこでは中絶した方には当日からOCを飲んでもらうという事業がスタートして、今は必ず当日から飲んでもらうようにしています。
それほど反復人工妊娠中絶が多いということですか。
金子先生:データでは、どこでも年齢に関係なく3割くらいの方が反復人工妊娠中絶しています。それを減らす目的で研究事業がスタートし、中絶した当日からOCを処方するようにしましょうということになりました。手術のあとは、必ず術後の経過を診るために診察に来ますから、手術当日に処方して4日後くらいに来院したときに次の周期分も持ち帰ってもらうのが理想です。そうすれば必ず2周期分は飲んでくれますから、飲むのが習慣になって途中でやめる方も少なくなります。
みなさんすぐにOCを受け入れて飲んでくれますか。
金子先生:中には、コンドームを付けますという方もいますが、ほとんどの方が飲んでくれます。中絶したときは辛いけれど、人間はすぐに忘れてしまうからオペ当日から飲みましょう、と説明して飲んでもらっています。そして気が付けば中絶は本当に減りました。半減しています。
50%くらい減ったということですか。
金子先生:はい、中絶台帳をみていて最近減ったなと実感しています。
年代的にはいくつくらいの方の中絶が多いですか。
金子先生:若い方が多いように思うかもしれませんが、既婚の方も割と多いですね。夫婦生活があるときに枕元にコンドームを置く夫婦はあまりいないようです。IUD(子宮内避妊用具)をすすめる場合もあります。お産も扱っているメリットとして、産後の一ヶ月検診のときに、経産婦の場合は今後の家族計画を尋ねます。2人目のときなら3人目を考えているかどうかを聞いて、それ以上出産を考えていない方にはOCやIUDのパンフレットを渡して、それぞれのメリットなどをお話してすすめています。
>>中絶手術の回数が減ったというのはうれしい話ですね。
閉経からが女の勝負、第2の人生です
女性の意識も変わってきてると思うのですが、自分のQOLを上げるためによくHRT(ホルモン補充療法)を使う方も増えていますか。
金子先生:HRTを行う方も多いです。昔の女性の寿命は、50、60歳くらいでしたが、今はそこからが第二の人生です。どう生きるかはその方のライフスタイルによりますが、50歳くらいまでOCを飲んで、それを過ぎたらHRTに切り替えるのがいいとすすめています。
こちらには更年期の患者さんもいらっしゃいますか。
金子先生:たくさんいます。当院では、下は2、3歳のお子さんから、上は90歳近い方まで幅広くいらっしゃいます。80代の方もたくさん来ます。
女性の人生まるごと、ということですね。
金子先生:本当にそうです。ここは交通の便もいいので、車の運転ができない方もバスや電車を利用して、遠方からやってくる方も多いのです。当院で出産して、更年期を迎えてまた来られる方もいます。
更年期の方は、みなさんHRTのことをご存知ですか。
金子先生:昔に比べてHRTをご存知の方は増えています。はじめから希望されてくる方は閉経が過ぎた方、こちらからすすめる方は月経不順が始まる50歳前後の方です。40代になって月に2、3回不正出血がある方や月経不順で来られる方、婦人科検診を受けていない方やがんを心配して来院した方が、更年期障害やHRTの説明を聞いて始めることも多いです。
私は閉経からが女の勝負という意識を持とうとみなさんに訴えています。
産婦人科を怖がらないで、何でも相談してほしい
一時HRTの評判が下がったこともありましたね。
金子先生:そのときは新聞記事を持ってくる人もいました。でも、若干乳がんのリスクが増えるといってもほんのわずかだから、きちんと検診さえしていれば問題ないわけです。乳がんのデータと、他の様々なメリットをきちんとあわせて見せると、患者さんはだいたいHRTをとります。
患者さんの気持ちになって、きちんとデータを踏まえた熱心な説得をしてもらえるのはとても心強いです。
金子先生:私は診察に入ってきた瞬間にHRTをしているか、していないか当てられますよ。見た目の年齢や肌年齢が実年齢と違う感じがするんです。
でも、強制は絶対にしません。HRTはいつでもやめられるからどんなものか試してみるのもいいですよとは言います。どうしてもHRTがいやなら漢方もあるし、他にも上手に年を重ねていくという方法はあると思います。やはり患者さんが自分で選択した方法がいちばんだと思います。
やはり、先生と相談しながら自分で選択するということができるといいですよね。本当に先生のような産婦人科の医師が身近にいていただけると心強いと思います。
金子先生:私のような医師もいるので、産婦人科を怖がらないでなんでも相談してほしいです。月経にまつわるすべてから妊娠や出産まで、他では相談できないことでも、ここでは相談していただけます。月経がきちんとないと妊娠もできないし、逆にしたくないときに妊娠しても困るわけです。だからその辺の選択について、いつでも相談できる相手として味方に付けてほしいと思います。
>>気さくに話せて、しかも人生を通じて診ていただける素敵な先生という印象を強く持ちました。今日はどうもありがとうございました。